わたしの観た俺節③

テレサも去っていき、歌だけが残ったコージは、大切にしていたばっちゃんの背広も訛りも捨てて、デビューに向けてレッスンをする。
サイズの合わない流行遅れの紺の背広から、ベージュの麻の背広に柄物のワイシャツへ。
歌い方もどことなく変わっている気がした。

 

デュエット曲(引越しをするなら教えてよ)は、ローカルな引越し屋さんのCMに使われるようで、でもそれは結局は寺泊行代が、もう一度売れるための踏み台でしかなかった。

 

それでもやるしかないと熱く語るコージに、行代も本気を出すことを決める。

 

引越し屋さんの社長(六角精児)との会食の場で、ふざける社長に殴られて、笑え!と言われたり、男(コージ)必要か〜?よし、お前カブトムシ(おそらく引越し屋のマスコット)のきぐるみ着て歌え!と言われても、コージは精一杯の笑顔で「なんでも…やらせていただきます」と答える。

 

しかし、行代のヌード写真を出すことを聞いたコージは、歌手としてではなく、それが行代さんのやりたいことなのかと問いかける。
行代がずっと輝いていられるように魔法をかけ続けてあげているんだとプロデューサーの戌亥に言われる。

戌亥と行代は好き合っているのだ。

 

行代に多少なりとも好意を抱いていた社長は、プロデューサーと行代がそういう関係であると知り、やってられないよと、この話はなかったことにされてしまう。

 

行代に「あんた、踏み台にもなれないんだね」と吐き捨てられ、社長の元へ向かうコージだったが、社長を殴ってしまい、デビューは完全になくなってしまう。

(ここ、殴るに至るまでの経緯が思い出せない…)

 

一方、テレサは警察で全てを話し、ストリッパー仲間たちも国へ帰ることになった。

ここでの刑事とテレサのやりとりがとっても面白くて、ちょいちょい笑えるシーンがあったのが良かった。

 

捜査にも協力的だし、何か欲しいものはないか?と聞かれたテレサは、演歌が聴きたい…と、北国の春を口ずさむ。
コージの名前こそ出さないけれど、痛いほどコージへの思いが伝わってきたシーンだった。

 

またその一方、ヤクザの元へ戻っていたオキナワだが、そこにもいられなくなり完全に居場所を失くしていた。
クスリを見せながら、元弟子が捕まったらあんたもおしまいだよなと北野を脅す。
そんなオキナワを、北野は自宅へ連れ帰り、監禁する。

 

監禁された状態で、箒をギターに見立てて曲を作るオキナワ。
「いい曲だな…」と、その姿を北野に見られ、暇すぎるからだよ!!と吠えるが「何をしてもいいこの中でお前はギターを選んだ、お前は歌を作る人間だ!曲を完成させろ!」と言われる。
ここで、ずっと北野のターンなんだけど、本当に凄かった…凄すぎて圧倒されすぎて、まともに台詞を覚えてないのが悲しい…。

 

 

場面暗転し、みれん横丁。
流しの大野は、カラオケの流行りに押され必要とされなくなり、みれん横丁へ戻ってきていた。
そしてデビューがなくなったコージもまた、ここへ戻ってきていたのだった。この時ゴミに埋もれてるんだけど、それすらもかわいい。
そこへオキナワの作った曲を持って北野がやってくる。

 

ここで、北野と大野が友人であることが発覚する。
「北ちゃん?!」「大(だい)ちゃん?!」ってはしゃぐおじさんたち。
コージが大野にデビューの相談をした時の「なんでいつも俺を置いていく奴の相談にのらなきゃいけないんだ」っていう台詞は北野のこともあったんだろうなと思った。

 

これはオキナワがお前のために作った曲だと、コージに渡す北野。
しかしコージは見ようとしない。

 

その時ギターの音と共にオキナワが現れる。
それを見て、嬉しくて、でも泣きそうな顔で「オギナワ〜〜〜」って言うコージ。
このシーン泣けた…。ピンポンでいうペコの、ヒーロー見参!みたいな。

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オキナワがコージの近くにいると安心感がすごい。

 

頑なに見ようとしないコージに「こっちはもう吐いたゲロだ!今さら飲み込めねえからな!」とオキナワ。

 

コージが「そんないっぺんに背負えねえ、自分のことすら重荷に感じてんだ…」って苦しそうに話すのがつらくてたまらなかった。
コージが怒ったり感情を露わにするのは、いつだって誰かを思ってのことで、でもうまくいかなくて、自分は一体なんなのか、いてはいけない存在なのかと言っているようだった。

 

うずくまるコージの上に、これはお前のだからな!と言ってオキナワが譜面を置いていく。
背中に手を伸ばし譜面を取るコージ。

 

しばらくして、戌亥がやってくる。
コージと行代の初舞台として、アイドルグループの前座の枠を用意していたのだった。
今更穴は開けられないから絶対に歌えと言われる。

 

 

場面暗転して、アイドルグループ、プラネットギャラクティカのリハーサルから始まる。
前座のコージはリハーサルもなく、スタッフに曲は何歌うの?一曲目でいいよねと適当に言われ「はい…」と答える。

 

いよいよ本番。
出入り口から、プラネットギャラクティカのファンに扮した役者さんたち(男)がたくさん入ってくる。ウチワ持ってたりしてジャニオタみあった。
舞台上だけでなく客席まで使うことで、よりリアリティが増していた気がする。

 

女性アナウンサーの紹介で、コージの出番がくる。
演歌なんておっさんが歌うものじゃん!とか、早くプラネットギャラクティカを出せと野次を飛ばされ物を投げられながらも、星影のワルツ(千昌夫)を歌うコージ。しかしお世辞にも上手いとは言えない。

 

そこへ出入り口からオキナワが現れる。
そして強制送還前のわずかな時間で、テレサたちもコージの歌を聴きに来ていた。

 

なんとか歌い終えた後、ありがとうございました…ではなく、泣きそうな笑顔ですごく小さな声で、すみませんでした…っていうコージが切なすぎた。

 

コージ!!と、北国の春を歌うテレサ
この時初めてちゃんとテレサの歌声を聴くんだけど、すごくよかった…。
テレサの強い想いが、叫び声に変わる。
それに応えるようにコージも叫ぶ。

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「イツモ…イツモイツモイツモ!コージノ ウタガ ナガレテタヨ!」とテレサ

「コージニ タリナイノハ ワタシ!ワタシモ コージト ワタシデ ワタシダカラ!!」

 

テレサのその言葉にハッとするコージ。オキナワ!あれはテレサに聞いたのか?!と。
オキナワの書いた歌詞と、テレサの言葉が同じだったのだ。

 

ギターを弾こうとするオキナワに、一人で背負わせてくれとコージ。
安物だから構わねえよ…とギターを差し出すオキナワ。

 

もう一曲歌わせてくれと、歌い始めるコージ。

飛んできた野次に、静かにしてけろ!!!と大声を出す。

 

振り始めは霧雨のような弱い雨、途中から土砂降りでびしょびしょになりながら歌う。

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ひとりで生きていけるのと
つよがり放した手だけれど
夜と朝の境目辺りに見る夢で
お前の名前を呼んでいた

 

おーいおーい ねえ
届いているかい
もっと傍まで来てくれよ
心の中まで入っておいで

 

俺が俺と言う時は
俺とお前で俺だから
俺の俺節 お前節

 

なんでもわかってくれるから
必死で隠したことだけど
くじけまみれの暮らしの中で
お前の影を探してた

 

おーいおーい ねえ
どこまでいこう
もっとずっと遠くまで
黙ったまんまで歩こうよ

 

俺が俺と言う時は
俺とお前で俺だから
俺の俺節 お前節
俺の俺節 お前節

 

 

最後まで聴き終えることなく、出発の時間が迫ったテレサは去っていく。
去り際に、この顔で覚えていてと笑顔の自分を指差して。
この時、コージはちゃんと笑顔でテレサを見送れたんだよ。

あの部屋での別れとは違って。


テレサが去った後、俺節を歌い切ったコージは泣き崩れる。

 

 

 

場面暗転して、翌日のみれん横丁。
プラネットギャラクティカの話題ばかりで、なんでコージのことが載ってねえんだよ〜!!他の新聞探せ!と住人たちは口々に言う。
ここすごくよかったなあ…コージ、仲間がたくさんできたな…ってばっちゃんの気持ちになった…。

 

そこへ現れるコージとオキナワ。

新聞に目を落とすが、気にするなとオキナワに言われ、笑顔で新聞を高く投げるコージ。
みれん横丁のテーマが流れ終幕。

 

 


映画だったらエンドロール流れるやつだった、完全に。

わたしにはスタッフクレジットが見えたよ…。